2026年4月から、国家公務員の兼業(自営)に関するルールが見直されます。令和7年(2025年)12月19日に人事院が公表した制度改正により、不動産賃貸を行う際の承認不要基準が緩和されることになったのです。これを受け、公務員の間で不動産投資、とくにワンルームマンション投資への関心が高まっています。

ただし、本記事はいかなる不動産会社の宣伝でもありません。手続きのハードルが下がったことの意味を正しく理解しつつ、公務員に不動産投資が選ばれる理由と、変わらないリスクや注意点の両方を、中立かつ誠実な立場から解説していきます。投資の全体像から知りたい方はワンルーム投資とは?基礎からの解説もあわせてご覧ください。

2026年4月、国家公務員の兼業ルールはこう変わった

令和7年(2025年)12月19日、人事院は国家公務員の「自営兼業」制度の見直しを公表しました。施行日は令和8年(2026年)4月1日です。これまで不動産賃貸業を兼業する場合、承認が不要となる「小規模」の基準は、独立家屋がおおむね5棟未満、区分マンションやアパートなどの貸与室数が10室未満、かつ賃料収入が年額500万円未満というものでした。

見直し後は、賃料収入の基準が年額500万円未満から年額1,000万円未満へと引き上げられます。さらに重要な変更点は、不動産賃貸について「年間賃料収入が1,000万円未満、かつ建物の延べ床面積が600㎡未満」であれば、棟数や室数にかかわらず承認が不要となる点です。これにより、これまで基準を超えて承認が必要だったケースの多くが、手続き不要の範囲に含まれるようになります。

あわせて、太陽光発電事業(定格出力50kW未満は承認不要)や、職員の知識・技能をいかした事業、社会貢献に資する事業なども、新たに承認の対象として範囲が広がりました。地方公務員については、今回の国の基準改定に追随して各自治体が見直す方向とされていますが、現時点では自治体ごとの扱いが異なるため、自身の勤務先の規程を確認することが必要です。

ただし、ここで誤解のないようにしていただきたいのは、これは「兼業としての承認手続き」に関するルールの変更であり、投資そのものが有利になったり、国が推奨したりしたわけではないということです。制度上の手続きハードルが下がった、という位置づけにとどまります。また、承認が不要になっても、勤務先の規程に沿った届け出や、賃貸管理会社への委託といった実務的な対応は依然として必要です。

以下、従来基準と見直し後の違いを整理してみましょう。

従来(〜2026年3月)
  • 賃料収入は年額500万円未満が目安
  • 5棟未満・10室未満などの規模も判断材料
  • 規模を超えると自営兼業の承認申請が必要
見直し後(2026年4月〜)
  • 賃料収入の基準を年額1,000万円未満に引き上げ
  • 延べ床600㎡未満かつ年1,000万円未満なら室数不問で承認不要
  • 小規模とみなされる範囲が広がり、承認手続きのハードルが低下
みんなのワンルーム投資 独自データ
問い
2026年4月の見直しで、何がどう変わったのか?
データ
不動産賃貸の承認不要ラインが「年間賃料収入500万円未満」から「1,000万円未満」へ。延べ床600㎡未満かつ年1,000万円未満なら室数にかかわらず承認不要に。
洞察
収入基準が実質2倍に引き上げられ、規模の小さい賃貸経営は兼業の承認手続きなしで行いやすくなった。
含意
手続きのハードルは下がったが、これは「投資が有利になった」という意味ではない。物件の良し悪しは別の問題として残る。
出典:人事院「国家公務員の自営兼業に関する制度の見直し」(令和7年12月19日公表・令和8年4月1日施行)

公務員に不動産投資が「選ばれる理由」

公務員の間で不動産投資が検討される背景には、いくつかの構造的な理由が考えられます。

まず、安定した収入と社会的信用があるため、融資審査に通りやすい傾向にある点です。銀行から見れば返済原資が安定していると評価されやすく、これはいわゆる「属性の強さ」に直結します。ただし、属性が強いからと言って、どんな物件でも購入してよいわけではありません。

次に、給与の上昇が物価上昇に追いつきにくい現状の中で、インフレ対策として実物資産を持ちたいという意識が高まっていることも理由の一つです。給与所得だけでは将来の購買力が心配されるなか、資産の多元化を図りたい人が増えています。

第三に、不動産賃貸は入居者募集や賃料の集金、日常の管理を賃貸管理会社に委託できるため、本業に支障を出さずに両立しやすい点も大きいでしょう。兼業規程の観点からも、自身で直接管理するのではなく専門会社に委託することが前提となることが多く、公務員のライフスタイルと相性がよいとされています。

第四に、公的年金だけに頼れないという将来不安から、給与以外の「第二の収入源」を作りたいというニーズが根強く存在します。とくに自衛官や消防官など、体力面や退職時期の事情が他の職種と異なる場合には、早めの資産形成を意識する人が多い傾向があります。

1
安定収入という「信用」
雇用と収入が安定しているため、金融機関の融資審査で有利になりやすい
2
インフレへの備え
給与の上昇が物価に追いつきにくい局面で、実物資産を持ちたい人が増えている
3
本業と両立しやすい
募集・集金・管理を賃貸管理会社に委託でき、兼業規程の面でも両立しやすい
4
第二の収入源
公的年金だけに頼れない不安から、給与以外の収入の柱を作りたいニーズ

始め方の具体的な手順や必要な自己資金については、公務員・会社員のワンルームマンション投資の始め方で詳しく解説しています。

ルールが緩んでも変わらない「3つの注意点」

制度の見直しは追い風に見えますが、投資の本質は何も変わっていません。ここは中立の立場から、特に注意していただきたい3つの点を整理します。

第一に、承認基準が緩んでも「割高な物件を買ってよい」ことにはならない、という点です。高い属性は融資を受けやすくする「武器」ではありますが、その武器を割高な物件の購入に使えば、損失を大きくするだけになりかねません。物件の良し悪しは、制度の変更とは無関係に判断する必要があります。

第二に、属性が高い公務員ほど、不動産会社の営業から積極的に声がかかるケースがあります。「今日決めないと無くなる」「公務員なら審査が通りやすいからこの物件がおすすめ」といった急かしのトークに乗らず、複数の情報源で物件の妥当性を確認することが大切です。

第三に、将来マイホームの住宅ローンを組む予定がある場合、投資用ローンとの「順番」に注意が必要です。先に投資用ローンを組んでしまうと、住宅ローンの審査に影響を与えることがあります。ライフプラン全体の中で資金計画を立てることが求められます。

制度がOKでも、物件が「買い」とは限らない

ルールの緩和はあくまで入口(手続き)の話です。物件が相場に対して割高でないか、将来の収支が成り立つかは、制度とは無関係に自分で見極める必要があります。銀行が融資してくれることは、その物件が良い物件であることの保証にはなりません。

なぜ融資が付いても危険な物件があるのか、その見分け方は銀行が嫌う物件・好む物件の違いもあわせて参考にしてください。

公務員が始める前に確認したいこと

実際に検討を進めるにあたっては、いくつかの実務的なチェックポイントがあります。

まず、勤務先の兼業規程を必ず確認してください。国家公務員であっても、所属する省庁や機関によって細かい取り扱いが異なる可能性があります。地方公務員の場合は、自治体ごとの対応を待つか、現在の規程を人事担当に確認する必要があるでしょう。

次に、賃貸管理会社への委託を前提とした運用設計を行ってください。兼業規程の趣旨からも、自身で賃貸業の業務に多くの時間を割くことは現実的ではなく、適切な委託体制を整えることが前提となります。

さらに、収支シミュレーションは自分の手でも試算してください。営業資料に載っている想定賃料や想定経費だけでなく、空室リスクや修繕費、管理委託手数料などを含めた試算を行うことが重要です。そして、相場に対して割高でないか、第三者にチェックしてもらうことも有効です。

STEP 1
勤務先の規程を確認
国の基準とあわせて所属先の兼業規程をチェック
STEP 2
収支を試算
家賃・ローン・管理費・空室・修繕を含めて自分で試算
STEP 3
相場と比較
提示価格が相場に対して割高でないか第三者の目で確認
STEP 4
納得してから契約
急かされても「今日決めない」。理解できた物件だけ進める

「信用が使えること」と「良い物件を選べること」は別物です。このことを忘れずに、一歩ずつ準備を進めてください。検討中の物件が相場に対して割高でないかは、契約前に割高診断で無料で確認できます。

まとめ

2026年4月の人事院の見直しにより、国家公務員が不動産賃貸の兼業を行う際の手続きハードルは、確かに下がりました。年間賃料収入1,000万円未満、かつ延べ床面積600㎡未満であれば棟数・室数を問わず承認不要となり、多くの公務員にとって制度面での障害が小さくなったことは事実です。

しかし、あくまでこれは「兼業としての承認手続き」の話です。投資の中身、すなわち物件が割高かどうか、将来的な収支が成り立つかどうかは、制度の変更とは無関係に、自分の目で見極める必要があります。

手続きが不要になったからといって、焦って物件を選ぶ必要はありません。まずは正確な情報を集め、自身のライフプランと照らし合わせたうえで、慎重に検討していただければと思います。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定物件の購入・売却を勧誘するものではありません。兼業規程・税務の取り扱いは所属先や個別事情により異なり、制度は今後変更される可能性があります。最新かつ正確な取り扱いは、所属先の規程および人事院の公表資料でご確認ください。記載の数値は一般的な目安であり、投資判断はご自身の責任でお願いします。