【2026-09-14 更新】 10年シミュレーションの計算に誤りがあったため、当社の割高診断データの中央値を使って計算し直しました(旧版の「中古は10年で+170万円」は、ローン返済額の計算誤りによるものでした)。収益還元法の例で使う利回りを、当社データの金融機関の評価利回り(3.5〜4.0%)に合わせました。東京23区の築年数別データを追加しました。

ワンルームマンション投資で多くの人が迷うのが「新築か中古か」です。一般には「中古のほうが合理的」と言われますが、当社の割高診断のデータで確かめると、中古なら安心とは言えませんでした。

この記事では、新築と中古の違いを整理したうえで、データとシミュレーションで比べ、何を見て判断すればよいかを解説します。YouTubeで発信されている「新築はダメ、中古ならいい」という主張の検証は、新築ワンルームマンション投資はダメ、中古ならいい?で詳しく扱っています。

新築と中古、ざっくりの結論

新築と中古のざっくり比較
新築と中古のざっくり比較
比較項目新築中古
購入価格新築プレミアムが乗り、高くなりやすい築年数とともに下がる
家賃新築時が一番高く、退去のたびに下がりやすい相場に沿っていることが多い(要確認)
実質利回り(当社データ・23区の中央値)3.29%築30年までは3.4%前後でほぼ同じ
設備の状態新しい築年数による(要確認)
購入時に確認すること価格の妥当性価格に加え、管理状態・修繕積立金

新築は高く買いやすい、中古は安く見えても利回りは新築とあまり変わらない。これが当社データから見えた実態です。では、なぜそうなるのかを分解します。

新築の価格に含まれる「新築プレミアム」

新築価格に含まれるもの
新築価格に含まれるもの

新築物件の価格には、土地と建物の価値のほかに、次のようなコストが含まれています。

  • デベロッパーの利益:開発のリスクを取った対価
  • 広告宣伝費:Web広告やモデルルームへの集客の費用
  • モデルルーム運営費:内装・人件費・維持費
  • 販売員の人件費
  • 竣工までの資金調達コスト
新築プレミアムは含み損になりやすい
新築プレミアムは含み損になりやすい

入居して「中古」になると、これらのコストは売却価格に反映されにくくなります。中古の市場価格は、主に家賃収入から逆算する「収益還元法」で見られるためです。

当社の割高診断では、東京23区の築0〜2年の物件の71%が「危険」または「割高」と判定されています。新築は、価格そのものを確かめることが最初の関門です。

新築は家賃が下がりやすい

新築は家賃が下がりやすい
新築は家賃が下がりやすい

新築の家賃は、新しさの分だけ高めに設定されがちです。当社データの東京23区の中央値でも、家賃は築0〜2年が11.85万円、築6〜10年が10.25万円、築11〜20年が9.3万円でした(建物が違うため同じ部屋の推移ではありませんが、目安になります)。

家賃が下がると、評価額も下がる

収益還元法では、評価額は「年間の手取り家賃 ÷ 利回り」で計算します。当社データの金融機関の評価利回り(23区の中央値3.5%)で計算すると、

  • 月の家賃が1万円下がる → 年12万円の減少 → 評価額は約343万円下がる

家賃の下落は、そのまま物件価値の下落につながります。中古は、すでに相場に近い家賃で貸されていることが多いため、この下がり幅は新築ほど大きくなりにくい傾向があります。ただし、中古でも今の家賃が相場より高くないかは必ず確認が必要です。

収益還元法で「価格の根拠」を確かめる

収益還元法で価格の根拠を確かめる
収益還元法で価格の根拠を確かめる

中古は同じ建物や近くの物件の売買事例が多く、収益還元法で価格の根拠を確かめやすいのが利点です。

収益還元法の計算式

評価額 = 年間の手取り家賃(家賃-建物管理費-修繕積立金)×12 ÷ 利回り

たとえば:

  • 月の家賃9万円、建物管理費と修繕積立金が月1万円
  • 年間の手取り家賃 =(9万-1万)×12 = 96万円
  • 利回り4.0%で計算すると → 評価額 = 96万 ÷ 0.04 = 2,400万円(3.5%なら約2,743万円)

提示価格がこの評価額を大きく上回っていれば割高、近いか下回っていれば適正の目安です。当社の割高診断も、物件の実質利回りと金融機関の評価利回りの差から判定しています。新築でも同じ計算はできますが、新築の家賃は下がりやすいため、今の家賃ではなく数年後の家賃で計算しておくと安全です。

当社データで比べる:東京23区の築年数別

東京23区の築年数別データ
東京23区の築年数別データ

当社の割高診断に入力された東京23区の物件を、入力時点の築年数で分けました(2023年1月〜2026年9月)。実質利回りは(家賃-建物管理費-修繕積立金)×12÷価格です。

築年数件数価格の中央値家賃の中央値実質利回りの中央値危険・割高の割合
0〜2年48件4,041万円11.85万円3.29%71%
3〜5年160件3,765万円11.69万円3.40%50%
6〜10年574件3,250万円10.25万円3.37%57%
11〜20年1,104件2,830万円9.30万円3.40%58%
21〜30年533件2,620万円8.90万円3.37%71%
31年以上1,278件1,780万円7.30万円3.98%44%

価格は古くなるほど下がりますが、家賃も同じように下がるため、実質利回りは築30年まで3.3〜3.4%でほぼ横ばいです。危険・割高の割合がはっきり下がるのは築31年以上だけでした。診断に入力されるのは検討中・保有中で気になっている物件が多いため、市場全体の割合ではない点に注意してください。

10年後の収支シミュレーション(新築vs中古)

「どちらがトータルで得か」を、上の表の中央値を使って10年間で比べます。

10年後の収支シミュレーション(新築vs中古)
10年後の収支シミュレーション(新築vs中古)
項目新築(23区・築0〜2年の中央値)中古(23区・築11〜20年の中央値)
購入価格4,041万円2,830万円
家賃(1年目)11.85万円9.30万円
建物管理費・修繕積立金月9,950円月9,210円
借入(全額ローン・金利2.0%)35年・月13.4万円30年・月10.5万円
1年目の手元の現金約50.5万円のマイナス約39.6万円のマイナス
10年間の手元の現金の合計約564万円のマイナス約419万円のマイナス
10年後のローン残高約3,158万円約2,068万円
持ち出しを取り戻せる売却価格約3,908万円(購入価格の97%)約2,713万円(購入価格の96%)

前提(仮定):家賃は新築が毎年1%、中古が毎年0.5%下がる。賃貸管理の委託料は家賃の5%、固定資産税は新築が年12万円・中古が年8万円、火災保険は年1万円。購入時の諸費用は新築50万円・中古130万円(仲介手数料を含む)。空室、税金、修繕の一時金は含めていません。「持ち出しを取り戻せる売却価格」は、10年後に売ってローンを返し、売却の費用(価格の3.3%+6.6万円)と10年間の持ち出しを差し引いて、ちょうどゼロになる価格です。

中央値で買って全額ローンにすると、新築も中古も毎年持ち出しになりました。中古のほうが持ち出しは小さいものの、「中古なら毎月プラス」にはなりません。

どちらも、10年後に購入価格の96〜97%で売れて、ようやく持ち出しを取り戻せる計算です。参考までに、当社データの築年数別の価格中央値をそのまま当てはめると、新築の10年後(築10〜12年)は3,250万円(築6〜10年)〜2,830万円(築11〜20年)、中古の10年後(築21〜30年)は2,620万円前後で、どちらも届きません(建物も時期も違う数字のため、目安にとどめてください)。

つまり、分かれ目は「新築か中古か」より、中央値より安く買えるか(利回りを上げられるか)、頭金を入れて持ち出しを減らせるかです。

総合比較

ここまでの論点を整理します。

比較項目新築中古
価格の根拠デベロッパーの利益込みで高くなりやすい売買事例が多く、収益還元法で確かめやすい
家賃新築時が一番高く、下がりやすい相場に沿っていることが多い(要確認)
実質利回り(23区の中央値)3.29%築30年まで3.4%前後
全額ローンの手元の現金(中央値の試算)年約50万円のマイナス年約40万円のマイナス
購入時に確認すること価格の妥当性価格・管理状態・修繕積立金

新築が向く人・中古が向く人

新築が向く人・中古が向く人
新築が向く人・中古が向く人

新築が選択肢になり得るケース

  • 長期保有(20〜30年)を前提とし、購入直後の含み損を承知できる
  • 設備の新しさや、当面の修繕の手間が少ないことを重視する
  • 相続対策など、毎月の収支以外の目的がはっきりしている

ただし、これらに当てはまっても「価格が高くなりやすい」「家賃が下がりやすい」構造は変わりません。

中古が選択肢になりやすいケース

  • 価格の根拠を、売買事例と収益還元法で自分で確かめたい
  • 相場より安く買える物件を探す手間をかけられる
  • 管理組合の議事録や修繕積立金の残高まで確認できる

どちらの場合も、中央値で買うと全額ローンでは持ち出しになることを前提に、価格と頭金を決めてください。

「中古リノベーション」という第3の選択肢

新築か中古かの議論に加えて、「中古+リノベーション済み」の物件もあります。価格は中古の水準で、設備・内装は新しい状態というものです。

中古リノベーション済み物件のメリット

  • 新築プレミアムがない
  • 設備・内装が新しく、入居者に訴求しやすい
  • 同じエリアの中古より家賃を高く設定できる場合がある

中古リノベーション済み物件の注意点

  • リノベーション費用が価格に上乗せされている場合、「割安」ではない可能性
  • 見えない部分(構造・配管・電気系統)の状態は内装から判断できない
  • 管理状態・修繕積立金の確認は通常の中古と同様に必要
比較新築中古リノベ済み通常中古
価格高い中間低い
設備状態最新ほぼ新しい築年数による
プレミアム分大きい中程度ほぼなし
管理確認の重要性中高い高い

中古リノベーション済み物件は「見た目の良さ」で判断せず、必ず収益還元法でも価格を確認してください。

中古を選ぶときの管理状態チェック

中古を選ぶ際、見落としがちなのが「管理状態」です。価格が適正でも管理状態が悪い物件は、大規模修繕の一時金・入居者トラブル・空室の長期化を抱えることがあります。修繕積立金が足りない建物では、大規模修繕の前に一時金を求められる場合もあります。

中古を選ぶときの管理状態チェック
中古を選ぶときの管理状態チェック

管理状態の確認チェックリスト

  1. 管理組合の議事録(直近数年分):修繕・トラブル・滞納の状況が分かる
  2. 長期修繕計画書:今後の修繕スケジュールと費用
  3. 修繕積立金の残高と月額:計画に対して積立が足りているか
  4. 管理費・修繕積立金の滞納:滞納が多い建物は管理組合の財政が苦しい可能性
  5. 現在の家賃が相場か:SUUMO・HOME'Sなどで同じ条件の物件を複数確認

これらを売主・仲介会社に依頼しても出てこない場合は、理由を確認してから判断してください。

いずれにせよ最後は「価格」を確認する

収益還元法で適正価格を確認
収益還元法で適正価格を確認

新築か中古かを選ぶ前に、どちらの物件でも「価格が適正かどうか」を数字で確認することが先です。

中古を選ぶときに確認すること

中古を選ぶときの注意
中古を選ぶときの注意
  1. 管理組合の議事録:大規模修繕の計画・決定事項・未解決の問題
  2. 長期修繕計画と修繕積立金の残高:将来の一時金の可能性
  3. 現在の家賃が相場か:同じエリア・同じ条件の物件と比べる
  4. 空室の場合、なぜ空室か:家賃が高すぎる、管理の問題、設備の老朽化など
  5. 管理会社の対応:管理を委託している会社の評判

最後に、新築・中古どちらでも確認すべき点を整理します。

購入前のチェック
購入前のチェック

新築でも中古でも、買った時の価格で成否の大半が決まります。検討中の物件が割高でないか、このサイトの割高診断で無料で確認してください。新築の提案を受けた段階でも確認できます。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定物件の購入・売却を勧誘するものではありません。

※築年数別のデータは、当社の割高診断に入力された東京23区の物件の集計(2023年1月〜2026年9月)で、市場全体の割合を示すものではありません。判定は実質利回りと金融機関の評価利回りの差にもとづきます。

※10年シミュレーションは当社データの中央値と本文に示した仮定による概算で、個別物件の結果を示すものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。