「将来の年金代わりになりますよ」
そう言われて、27歳・年収600万円の会社員の方が、都内の新築ワンルームマンションを購入しました。
不動産Gメン・滝島さんの動画で紹介されていた実例です。
ところが運用が始まってみると、通帳から出ていくお金が入ってくる家賃を上回り、年間で約40万円の持ち出しになっていました。
月にならすと3万円強。
手取りが増えるどころか、毎月3万円ずつ自分の給料を物件に注ぎ込んでいる状態です。
わたしは以前、まさにこの「新築ワンルーム」を売る側にいました。
だからこそ言えるのですが、これはその人が特別に運が悪かったわけでも、変な物件を掴まされたわけでもありません。
新築ワンルームには、買った瞬間から赤字になりやすい「構造」があります。
この記事では、その構造を数字で分解し、どこで止められたのかを一緒に見ていきます。
そもそも何が起きていたのか:年40万円の内訳
結論から言うと、家賃で「返済」はできても、家賃で「維持」まではできていなかったというのが赤字の正体です。
営業のセールストークは、たいてい「家賃でローンが返せます」で終わります。
たしかに、家賃とローン返済“だけ”を並べれば、その言葉は嘘ではありません。
問題は、そこに乗ってこない費用が毎月あることです。
ざっくりとした月次のイメージを、実例に近い数字で並べてみます。
| 項目 | 月額の目安 |
|---|---|
| 家賃収入 | +90,000円 |
| ローン返済(元金+利息) | −78,000円 |
| 管理費・修繕積立金 | −12,000円 |
| 賃貸管理委託料 | −4,500円 |
| 固定資産税(月割) | −6,000円 |
| 合計(手取り収支) | −10,500円前後 |
家賃とローンだけなら月1万円ちょっとのプラスに見えます。
ところが、管理費・修繕積立金・管理委託料・固定資産税を引いた瞬間、収支はマイナスに転びます。
ここに、退去が出たときの空室期間や、次の入居者を決めるための広告費(AD)、原状回復費が年に数回のせられます。
これらを年間でならすと、月1万円前後だったマイナスが月3万円規模、年40万円のマイナスにふくらむわけです。
数字の並び自体は、驚くほど地味です。
でも、この「地味な数字が毎月積み上がる」ことこそが、ワンルーム投資の怖いところなんです。
「赤字でも節税で得している」は本当か
ここでほぼ必ず出てくる反論が、「でも赤字の分は節税で戻ってくるんですよね?」というものです。
結論を先に言います。
戻ってくるのは赤字額そのものではなく、「赤字額 × あなたの税率」の部分だけです。
不動産所得が赤字になると、その赤字を給与所得と合算(損益通算)できます。
年収600万円の会社員なら、所得税と住民税を合わせた実効的な税率は、だいたい2〜3割です。
つまり、40万円の赤字に対して戻ってくるのは、多く見積もっても10万円前後。
残りの30万円前後は、戻ってこない純粋な持ち出しです。
- 赤字額 × 税率(2〜3割)だけ
- 多く見積もっても約10万円
- 減価償却が減り年々縮小
- 残りはそのまま手出しになる
- 約30万円が純粋な持ち出し
- 毎月の口座からは出続ける
しかも、この節税効果は年々小さくなります。
大きな経費になっている建物の減価償却費は年数とともに減り、ローンの利息部分も返済が進むほど小さくなるからです。
初年度は登記費用なども乗るので節税額が大きく見えますが、それは一度きりのボーナスのようなもの。
節税を前提に「実質プラス」と説明された収支計画は、時間とともに崩れると考えておいたほうが安全です。
節税の全体像は、ワンルーム投資が赤字になる5つの理由と確認方法でも数字を追って解説しています。
なぜ新築ワンルームは「構造的に」赤字になりやすいのか
ここが、わたしが営業側にいたからこそお伝えしたい一番のポイントです。
新築ワンルームが赤字になりやすい最大の理由は、販売価格に「新築プレミアム」が大きく乗っているからです。
新築の販売価格には、建物本体の価格だけでなく、
- 販売会社の利益
- モデルルームや広告の費用
- 営業担当の人件費・歩合
といった、いわば「売るためのコスト」が上乗せされています。
この上乗せ分は、あなたが買った瞬間に消えます。
新築マンションが、購入してすぐ「中古」になった途端に2〜3割値下がりするのは、このためです。
高く買っている=家賃に対して割高、ということなので、利回りは最初から低く固定されます。
そして低い利回りのまま、家賃はこの先じわじわ下がり、修繕積立金は段階的に上がっていきます。
収入は減る方向、支出は増える方向。
この逆ザヤが、年数とともに赤字を深くしていきます。
わたしが現場にいたとき、収支シミュレーションは「きれいに黒字に見える紙」を出すのが当たり前でした。
家賃は下がらない前提、空室はゼロ前提、修繕積立金は今のまま前提。
不動産Gメンの滝島さんが動画で繰り返し指摘しているのも、まさにこの「都合のいい前提で作られた収支表」の危うさです。
紙の上では黒字、現実は赤字。そのギャップが、27歳の彼の年40万円だったわけです。
本当に怖いのは「出口で詰む」こと
毎月の赤字以上に怖いのが、売りたくなったときに売れない、あるいは売ると損が確定するという出口の問題です。
新築ワンルームは購入直後に2〜3割値下がりする一方、ローンは35年かけてゆっくり減っていきます。
つまり購入から数年は、売却できる価格よりもローン残債のほうが大きい「オーバーローン」の状態が続きます。
- 購入直後に2〜3割下落する
- 数年間は残債のほうが大きい
- 「売りたくても売れない」
- 35年かけてゆっくり減る
- 差額は自己資金で埋める必要
- これが出口で詰む状態
この状態で売ろうとすると、足りない差額を自己資金で埋めないと売れません。
「毎月の赤字がつらいから売りたい。でも売るのに数百万円の持ち出しが要る」
これが、出口で詰むという言葉の意味です。
だからこそ、赤字物件は「すぐ売る」でも「我慢して持ち続ける」でもなく、今いくらで売れるか、残債はいくらか、持ち続けた場合の総持ち出しはいくらかを、まず数字で並べることが先決です。
このあたりは「やめておけばよかった」と後悔しないためにでも詳しく触れています。
27歳の彼に、わたしなら何と伝えるか
具体的には、取れる選択肢は大きく3つです。
どれが正解かは、残債・売却価格・今後の家賃見込み・あなたの年収と手元資金によって変わります。
「正解が人によって違う」からこそ、一般論のネット記事だけでは決められないのです。
もしあなたが今、同じように「毎月お金が出ていくワンルーム」を抱えているなら、まずは数字を一緒に整理させてください。
わたしは物件を売る立場ではありません。
あなたの物件を「買ったほうがいい」とも「売ったほうがいい」とも、最初から決めていません。
数字を見て、あなたにとっての損が一番小さい道を一緒に探す。それがセカンドオピニオンの役割です。
自分の物件が同じ状態か、10分でわかるセルフチェック
最後に、今の物件が「持っているだけでお金が出ていく物件」かどうかを、自分で確かめる方法をお渡しします。
次の式に、手元の書類の数字を入れてみてください。
年間の手取り収支
= 年間家賃収入
−(年間ローン返済 + 管理費・修繕積立金 + 管理委託料 + 固定資産税 + 想定空室損)
このマイナス分が、あなたの1年間の実際の持ち出しです。
そこから「赤字額 × あなたの税率」で戻る節税分を引いても、まだマイナスが残るなら、その物件は税金を考えてもお金が出ていっていることになります。
そしてもう一つ、「そもそも適正な価格で買ったのか」という視点も忘れないでください。
割高な価格で買っていれば、家賃をどう工夫しても収支は好転しません。
判断に迷ったら、10秒でできる割高診断で相場に対する割高度を確かめたうえで、無料相談で個別の出口まで一緒に整理していきましょう。
同じように後悔した人の具体例は、ワンルーム投資の失敗事例にもまとめています。
まとめ
27歳・年収600万円の彼の年40万円の赤字は、運用の失敗ではなく、「買った時点の価格と、都合よく作られた収支計画」に原因がありました。
- 家賃で返済はできても、維持費まで含めると赤字になりやすい
- 節税で戻るのは赤字の一部だけ。残りは純粋な持ち出し
- 新築プレミアムのぶん、買った瞬間に価格が下がり出口で詰みやすい
大事なのは、感情で動く前に、自分の物件の数字を全部そろえることです。
それが、これ以上の損を止める最初の一歩になります。
参考動画:不動産Gメン滝島「年収600万・27歳が都内ワンルームで年40万円赤字…」(YouTube)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定物件の購入・売却を勧誘するものではありません。文中の収支の数値は実例をもとにした一般的な目安であり、個別物件・個人の状況(金利・築年数・エリア・税率等)により異なります。税務の取り扱いは制度改正等により変わる場合があります。投資判断はご自身の責任でお願いします。
