不動産投資の節税について、販売の場ではいくつかの決まったトークがよく使われます。それぞれ、全部が嘘というわけではありません。本当のことの一部だけを見せて、残りを見せていない。これが共通点です。
この記事では、よく聞く7つのトークを、中古ワンルームの試算の数字で確かめます。数字は、築21年・家賃月10万円の中古ワンルームを年収800万円の会社員が全額ローンで買った例です(前提は記事の下にまとめました)。
私たち「みんなのワンルーム投資」は、ワンルーム投資の相談サービスを運営しています。代表のこうのすけは宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーで、税理士ではありません。特定の会社を批判する目的ではなく、説明で抜けやすい点を数字で確かめる記事です。個別の申告や判断は税理士にご相談ください。

トーク1「1年目にこれだけ税金が戻りますよ」
本当の部分:建物の30%を設備として分けて償却すると、1年目は約45万円戻ります。2年目・3年目も約27万円・26万円戻ります。
見せていない部分:設備を3年で償却し終える4年目からは赤字が消え、毎年約5万円税金を払う側になります。建物をまとめて償却する方法なら、戻るのは1年目の約10万円だけでした。

トーク2「毎月の持ち出しは少しありますが、税金が戻るので実質プラスです」
本当の部分:毎月の持ち出しは約1.4万円(年約16万円)です。1〜3年目は戻る税金のほうが大きく、プラスに見えます。
見せていない部分:4年目からは戻る税金がありません。持ち出しがあること自体は悪いことではなく、家賃が上がり、売るときに手元に残る物件なら立派な投資です。問題は、税金の話で持ち出しが消えるように見せて、家賃と物件の価値が上がるのかという本当に確かめるべき話を飛ばしてしまうことです。修繕積立金は長期修繕計画に沿って段階的に上がることも多く、持ち出しの額はずっと同じとは限りません。
トーク3「減価償却はお金が出ていかない経費なので、まる得です」
本当の部分:減価償却は、その年にお金が出ていかない経費です。
見せていない部分:減価償却した分だけ、帳簿上の物件の値段が下がります。設備を分けた場合、6年間の減価償却は約569万円、帳簿上の値段は約2,285万円になります。6年後に買ったときと同じ2,854万円で売れると、売却の費用を引いても利益は約483万円、税金は約98万円です。6年間で戻った税金は約83万円なので、売るときの税金のほうが多い計算です。

もちろん、後払いにする意味がないわけではありません。持っている間に戻る税率が約44%で、売るときが約20%なら、その差の分は得になります。どの年収から効いてくるかはワンルーム投資で節税できる年収は?で計算しました。
トーク4「ローンの利息も全部経費になりますよ」
本当の部分:不動産所得の計算では、利息は経費になります。
見せていない部分:赤字を給与と損益通算するときには、赤字のうち土地を買うための借入の利息にあたる部分は通算できません(租税特別措置法41条の4)。築6年・建物6割の物件では、2年目の利息約53万円のうち約21万円が土地の分にあたり、建物をまとめて償却した場合の2年目の赤字(約2.5万円)はすべて通算できず、戻る税金は0円でした。

トーク5「確定申告はこちらで全部やっておきますね」
これはトリックというより、危うい話です。他人の税務申告書を業として作ることは、原則として税理士にしか認められていません(税理士法)。お金を受け取っていなくても、この考え方は変わりません。
さらに怖いのは中身です。赤字を大きく見せるために、償却できない土地まで減価償却していたり、払っていない経費が入っていたりする申告書も見られます。申告書に名前が載るのはあなたで、税務調査で否認されたときに加算税や延滞税を払うのもあなたです。
参考までに、2023年3月には「会社員でも税金が戻る」とSNSで勧誘し、副業の架空の赤字で確定申告をさせていたとして、東京国税局がコンサルタントを告発したと報じられました(不正な還付を受けた会社員は109人・約4,300万円。日本経済新聞)。不動産の件ではありませんが、1つの指南役をきっかけに多くの申告がまとめて調べられることがある、という例です。
トーク6「青色申告にすれば65万円の控除も使えます」
本当の部分:青色申告には65万円(または55万円)の特別控除があります。
見せていない部分:この控除は、不動産の貸付が事業的規模(目安は5棟10室以上)であることが条件です。ワンルームを1〜2室貸している会社員は当たらず、控除は最大10万円です。しかも控除は黒字を小さくするものなので、赤字の年には効きません。

トーク7「物件を見に行く旅費も、食事も経費にできますよ」
経費になるのは、その物件を貸すために本当に必要だった支出だけです。入居者がいて管理会社に任せているワンルームのために、泊まりで見に行く必要があるのか。家族との食事が貸付のために必要だったのか。税務署はそこを聞いてきます。家族旅行や日常の食事を経費に入れて赤字を大きくするのは節税ではなく、否認されたときに加算税がかかる申告です。
「節税になりますよ」と言われて検討している方へ。その節税があなたの場合にいくらになるのか、何年続くのか、売るときに何が起きるのかを、トランス税理士法人の中山慎吾 代表税理士と、宅地建物取引士のこうのすけが、それぞれ第三者の立場で確かめます。物件の販売は行いません。質疑応答ではその場で税理士に直接質問できます。
日時:2026年10月27日(火)19:30〜21:00(受付19:15)
会場:東京都港区新橋(定員10名)。オンライン・アーカイブ視聴もあります
参加費:2,000円(税込)
7つを並べると

| トーク | 見せていない部分 |
|---|---|
| 1年目にこれだけ戻る | 戻るのは最初の数年だけ |
| 税金が戻るので実質プラス | 家賃と物件の価値の話を飛ばしている |
| 減価償却はまる得 | 売るときに課税の対象として戻る |
| 利息も全部経費 | 土地の利息の分は給与と相殺できない |
| 申告はこちらで | 申告の責任はあなたにある |
| 青色申告で65万円控除 | 1〜2室では使えない |
| 旅費も食事も経費 | 貸すために必要な支出だけ |
どれも一部分は本当です。だから信じてしまいます。節税のトークは、最初の数年・持っている間だけを切り取っていると考えて、6年後・10年後に売るところまで並べて確かめてください。6年後の売却までの全体は不動産投資の節税シミュレーションにまとめました。

言われたら、この3つを聞き返す
- 「何年目まで、いくら戻りますか。4年目以降はどうなりますか」
- 「6年後・10年後に売るとき、税金はいくらかかりますか」
- 「土地の利息の分は、損益通算から外していますか」

そして最後に確かめたいのが、物件の値段です。試算で損得を一番大きく動かしたのは、税金ではなく家賃と物件の価値、そして買った値段でした。検討中の物件が金融機関から見て割高でないかは、無料の割高診断で確かめられます。
販売資料の節税シミュレーションの見方は、節税シミュレーションを見るときの7つの視点もあわせてご覧ください。
試算の前提:東京・駅徒歩5分の中古ワンルーム(築21年、土地の利息の例のみ築6年)、家賃月10万円、建物管理費と修繕積立金は月1.2万円、価格は評価利回りで割り戻した値段(築21年2,854万円・築6年3,017万円)。全額ローン・金利1.8%・35年。管理手数料は家賃の5%、固定資産税等は年5万円、保険は年1万円、1年目の諸費用60万円を経費とした仮定。建物の割合は築21年45%・築6年60%(仮定)。設備30%は比べるための仮定です。年収800万円(課税所得480万円)で、赤字を入れる前と後の税額の差を毎年計算しています。6年持って7年目の初めに同じ値段で売却(長期の税率)。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の物件・会社の購入や売却を勧誘・推奨するものではなく、特定の会社を批判するものでもありません。税務の取り扱いは個別の状況で異なるため、実際の申告は税理士にご相談ください。
※試算は上記の前提による概算で、将来の家賃・売却価格・税額を約束するものではありません。税制は2026年9月時点の内容です。
